製造業の不良率を改善するには?手直し・廃棄を減らすAI活用の進め方

製造業の不良率を改善するには?手直し・廃棄を減らすAI活用の進め方。監修:株式会社アスタ 代表取締役 小路雅也

監修:株式会社アスタ 代表取締役 小路雅也

売上は増えているのに利益が残らない。出荷には間に合っているものの、手直しや再検査で現場が疲弊している。同じ不良について、何度も対策書を作っている。こうした状態では、不良率の数字だけでなく、その裏で使っている時間と費用を見直す必要があります。

不良・手直しを減らすには、現場の事実から課題を捉え、対策の実行と効果確認までつなげることが必要です。AIは記録の整理や分析を助けますが、導入だけで品質が上がるわけではありません。製造条件とともに、改善活動を続けられる体制も見直すことがポイントです。

この記事では、製造業の経営者・実務責任者に向けて、不良・手直し・廃棄を減らすための課題整理、改善活動の進め方、AIの役割を解説します。加工、組立、食品などに共通する考え方を扱いながら、業種や製品によって変わる品質条件も整理します。

不良率だけでは、利益を圧迫している仕事が見えない

改善の優先順位は、不良の発生件数と、そこから生じる損失の両方で考えます。安価な部材の廃棄が多い場合と、高額な完成品を分解して組み直す場合では、同じ一件でも負担が違います。発生頻度が低くても、顧客の安全や製品の重要機能に関わる問題は、費用の大小にかかわらず優先して対応します。

出荷前に手直しして良品になった製品も、最初から問題なく完成した製品とは分けて把握したいところです。最終的に出荷できたかだけを集計すると、修正にかかった人手や再検査が見えません。現場が追加作業で吸収しているほど、経営者には問題が小さく見えてしまいます。

負担を把握するときは、次の項目を社内で追える範囲から整理します。最終的に出荷できた製品でも、追加でかかった費用や時間は確認の対象です。

  • 廃棄した材料・仕掛品・完成品の原価
  • 作り直しや修正にかかった追加の作業時間
  • 再検査に使った時間と費用
  • 返品対応や再発送など、出荷後に生じた負担

廃棄原価に含めた作業費をもう一度加える、といった二重計上は避けてください。精密な金額を初日から揃えるより、どの損失が繰り返されているかを説明できる状態にすることが出発点です。

たとえば、手直しが月60時間あり、社内の管理用単価を1時間3,000円と置くと、負担は月18万円相当です。これは説明用の仮定であり、アスタの実績ではありません。また、60時間が減っても人件費がそのまま18万円減るとは限りません。残業・外注費の削減につながったか、空いた時間を必要な生産へ回せたかを分けて確認します。

不良品を見つける対策と、不良を生まない対策をつなぐ

検査の強化は、不良品を顧客へ届けないために役立ちます。ただし、発生する不良が変わらなければ、廃棄や作り直しの負担は残ります。検査で見つけた情報を、材料、設備、作業方法、設計・指示の見直しへ戻すことが大切です。

ここで分けたいのが、不良を発見した工程と、不良が発生したと考えられる工程です。最終検査で傷が見つかっても、原因が検査工程にあるとは限りません。加工後の搬送、部品の保管、組立時の接触など、どこで状態が変わったかを確認します。発見場所だけで分類すると、対策を考える相手を間違えます。

中小機構のJ-Net21も、日々の工程や品質に関する数値を記録し、工程の状態を確認する管理方法を紹介しています。記録を残す目的は、報告書を増やすことではありません。いつもと違う条件に気づき、次の生産で何を変えるかを判断するためです。出典:J-Net21「不良品を出さないための工程管理方法について教えてください。」。

AIは、課題を確かめる情報収集・分析と議論に活用する

現場で気づいたことや関係者の意見をAIに整理させると、まだ確かめていない条件や、意見が分かれている点を洗い出す助けになります。ただし、AIが提案した論点も仮説です。実際の記録や仕事の様子と照合し、何を改善課題とするかは人が判断します。

報告書を読む生成AI、画像を判別するAI、工程データの傾向を分析する仕組みでも、役割は異なります。情報を探せないのか、検査の負担が大きいのか、発生条件がわからないのか。捉えた課題に合わせて、必要な方法を選びます。

報告書を整理し、過去の対策と結び付ける

担当者ごとに不良の書き方が違うと、似た問題が別の分類に入り、過去の対策を見つけにくくなります。生成AIには、自由記述から不具合の内容、発見工程、処置を取り出し、分類候補を付ける使い方が考えられます。品質担当者が元の報告と照合し、採用する分類を確定します。

過去の対策書を検索する場合も、似た文章が出てきただけでは、その対策を使えるとは限りません。対象製品、設備、使用材料、変更履歴が異なれば条件も変わります。回答と一緒に元資料、作成日、対象工程が確認できる形にして、古い対策や別製品の条件をそのまま採用しない運用にします。

画像や工程データの分析は、現場での検証と組み合わせる

外観検査をAIで補助する場合は、撮影条件や品種によって判定が変わるため、自社の製品で見逃しと過検出を確認します。寸法、強度、成分など、画像だけでは確認できない品質もあります。何を判定する仕組みなのかを限定し、必要な測定や検査と組み合わせることが前提です。

工程データの分析で、ある設備や時間帯に不良が集中して見えたとしても、それだけで原因は確定しません。その時間帯に難しい製品を作っていた可能性もあります。AIが示す傾向は、原因を確かめるための手がかりとして扱います。担当者の記憶だけに頼らず、材料や作業条件の記録、現物の状態を合わせて検証します。

同じ問題が繰り返されるときは、記録と組織の動きを見直す

最初に整えたいのは、立派なデータ基盤よりも、同じ問題を後から追える記録です。既存の日報や不良報告書を使い、対象製品・ロットと発生内容を結び付けます。すべての記録項目を一度に増やすと、忙しい現場ほど入力が止まるため、次の判断に使う情報へ絞ります。

  • 対象の製品・ロット・数量と、適用した図面や仕様・判定基準の版
  • 発見した工程・日時、不具合の状態、確認できた製造条件と元の記録
  • 処置内容、手直し等の負担、対策の担当者・実施日・効果確認の結果

原因欄は、わかっていないことまで埋める必要はありません。「作業者の不注意」と早々に結論付けると、治具の使いにくさや指示の曖昧さを見落とします。確認できた事実、考えられる原因、検証して確定した原因を分けて残すと、次の担当者が判断を引き継ぎやすくなります。

記録が揃っていても、同じ問題が繰り返されるなら、改善活動の回し方も確認します。対策の担当が決まっていない、判断を待ったまま実行されない、実施後の効果を誰も確かめていない。こうした状態であれば、不良の技術的な原因とは別に、組織として改善を進める仕組みに課題がある可能性があります。

役割を分けて考えると、経営者・責任者は改善の優先順位を決め、必要な人員や時間を確保します。現場・品質担当者は現物や記録で事実を確かめ、対策を試して結果を確認します。AIには情報収集・整理・分析や論点の検討を補助させ、課題や対策の最終判断は人が担います。

手直しで終わる対応と、再発防止へつなぐ改善の比較。不良を発見して手直し・再検査をしても、原因が残ると再発する。現物と記録の確認、原因の検証、対策の実行、効果確認まで進み、結果を見て見直す。AIは記録の整理・傾向の分析を補助し、判断・対策・品質確認は人が担う。
手直し・再検査だけで終わらせず、原因の検証・対策・効果確認までつなぐ。AIは記録の整理や分析を補助し、最終判断は人が担います。図を押すと拡大できます。

この流れを回すには、担当者と期限だけでなく、いつ結果を振り返るかも決めます。対策の内容を理解し、実行できる条件が整っていなければ、新しいAIの仕組みを作っても活用しきれません。役割を決めた後も、判断や作業が止まっている箇所を確かめ、進め方を直します。

すべてをAIで解決する必要はありません。未確認・対策中・効果確認中などの状態を共有するだけなら、通常の業務システムでも対応できます。AIで報告書を速く作ることよりも、報告から判断、実行、振り返りへつながっているかを優先して確かめます。

業種ごとの条件に合わせて、対策を検証する

情報を整理して対策を試し、再発を確認する流れは製造業に共通します。一方、比較する単位や変更できる条件は同じではありません。組立では部品構成や作業指示、成形では材料ロットや設備条件、食品では原料や製造・保管条件など、品質に関わる情報を自社の製品に合わせて選びます。

たとえば、組立工程で部品の取り付け違いが繰り返されている状況を考えます。これは説明用の仮定です。まず関係者に状況を聞き、実際の切り替え作業や指示書、部品配置を見ます。そこで品種の切り替えに課題がありそうだと考えたら、AIで過去の報告を整理し、発生時期や品種との関係を調べます。旧版の指示書が残っていないか、似た部品を取り違えやすくないかも、現場の事実と照合します。

原因を確認できたら、最新版だけを参照する仕組み、部品を混在させない配置など、原因に対応する方法を試します。AIによる注意文の作成だけで済ませず、仕事の条件を変えることがポイントです。次に同じ品種へ切り替える場面で、対策が実行されたか、不具合が再発していないかを確認します。

食品など、安全性に直結する製品では、AIの提案だけで製造条件や出荷基準の変更を決めず、品質責任者による評価と必要な検証を通して判断します。他社の改善例を参考にする場合も、対策の手順だけを移すのではなく、自社の品質条件と責任体制に合うかを確かめてください。

不良・手直しの削減を、自社の現場に合う仕組みで。課題の整理から導入・運用まで伴走。株式会社アスタへ製造業の業務改善を相談する

中小製造業では、現場が続けられる仕組みから始める

専任のデータ分析部門を持つ大企業の導入方法を、そのまま中小製造業へ当てはめるのは難しい場合があります。品質担当者が検査や顧客対応を兼務し、工場長も日々の生産を見ているなら、新しい入力や会議を増やす余裕は限られます。対象を一つの不良区分や工程に絞り、既存の報告と改善の流れに組み込む方が検証しやすくなります。

仕組みを整える方法は、新しい製品の導入だけではありません。現状の使いにくさと、実現したい仕事の流れに合わせて、次の選択肢を比較します。

  • 既存の品質管理ツールを設定し直し、分類や検索の機能を活かす
  • 日報と不良報告を連携し、同じ情報の二重入力を減らす
  • 自社の手順に合う入力画面や承認の仕組みを、必要な範囲で開発する

市販の製品が自社の承認手順に合わない場合には、AIを開発工程に活用して試作品を作り、現場の反応を見ながら改修する方法も選択肢になります。何を作るかは、実際に使う担当者と確認しながら絞り込みます。

ただし、自社専用に作れば必ず安くなるわけではありません。月額利用料だけでなく、初期開発、既存システムとの連携、保守、障害対応、担当者交代後の管理を含めて比べます。業務システム開発の費用と既製サービスの比較方法でも、判断のポイントを整理しています。

図面や配合、顧客の不具合情報などを外部AIへ入力する前には、利用環境とデータの扱いを確認します。IPAは、AI利用に伴う営業秘密の漏えいや誤情報などのリスクを整理しています。社内で認めた情報だけを使い、資料へのアクセス権限を保ち、元記録を確認できる状態にすることが基本です。出典:IPA「AIセキュリティ」。

改善効果は、不良率・損失・確認負担で確かめる

改善前後を比較するときは、何を数えた数字なのかを揃えます。不良率を「検査した製品数に対する不良品数の割合」とするなら、同じ製品に複数の不具合があっても、製品の数と不具合箇所の数を混ぜません。抜き取り検査なら、その結果を全生産品の不良率と同じものとして扱わないことも必要です。

確認する項目見たい変化比較するときの注意
不良率・再発状況同じ種類の不良が減ったか生産量、品種、判定基準、検査条件を揃える
廃棄・手直し・再検査の負担失っていた材料や追加作業が減ったか二重計上を避け、時間削減と実際の支出削減を分ける
社外流出・現場の確認負担品質を守りながら運用を続けられるか見逃し、過検出、入力や確認の追加時間も見る

AIで見つけられる不良が増えた直後は、記録上の不良率が上がる場合もあります。それをすぐに悪化と判断せず、実際の発生が増えたのか、従来見逃していたものを把握できるようになったのかを分けます。逆に、検査対象や判定を変えた結果の低下を、工程が改善した成果と取り違えないようにします。

経営者は、改善のために使う費用と、継続して得られる効果を並べて判断します。報告書を作る時間が減ったことと、不良の発生が減ったことは、別の成果として確かめます。前者で生まれた時間を原因の検証や対策の実行へ回せているかまで見ると、AI導入を品質改善へつなげやすくなります。

現場と組織の両面から改善を進める、アスタの支援

株式会社アスタは、従業員10〜200名規模の中小企業に特化し、全国でAI導入・活用を支援しています。特定のAIツール導入を前提にせず、経営課題と現場業務の整理から、設定・試行・運用改善・定着まで実務に伴走します。

アスタでは、まず相手が何を課題と捉えているかを聞き、実際の仕事や記録を自分たちの目で確かめます。聞き取りだけで改善策を決めないのは、関係者と私たちで、見えている課題が異なる場合があるからです。誰か一人を自動的に正解とするのではなく、それぞれがそう考える理由と現場の事実を踏まえて改善案を作ります。

対策を実行する人の意見も踏まえることが納得感を生み、改善を進める速さにもつながると考えています。課題の特定をAIに丸投げせず、人が現場を見て考え、その検討に情報収集・分析・議論の補助としてAIを活かす。この順序と役割を大切にしています。

また、同じ問題の繰り返しに組織上の課題が絡むケースも、アスタの得意領域です。AIもSFAやCRMも、仕組みを導入しただけで改善が進むとは限りません。誰が判断し、誰が動き、いつ結果を振り返るかまで関係者と整理し、実務で使い続けられる状態を支援します。品質基準や製造条件についての専門判断は、貴社の責任者と確認しながら進めます。

原因や答えをすべて確定してから相談する必要はありません。まずは繰り返している不良を一つ選び、直近の報告と対策の記録を確認してみてください。何を課題と考えているか、どこがまだわからないかを共有するところから、一緒に整理できます。支援内容は中小企業AI業務改善をご覧ください。