中小企業でAIを活用するメリットとは?導入事例とともに徹底解説
帝国データバンクの調査によると、人材不足の深刻化により、2024年度の「人手不足倒産」は342件と過去最多を更新したことが明らかになっています。

そんな人手不足が事業に大きな影響を及ぼす昨今、少ない人手でも業務を回せるよう、中小企業においてもAIの導入が進んでいます。この記事では、中小企業がAIを導入するメリットや成功事例、導入のポイントを解説します。
参考:人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)|株式会社 帝国データバンク[TDB]
中小企業でAIが必要になっている理由とは
AIの登場により、業務スピードや効率化は急速に進んでいます。そのため、企業が競争力を維持するにはAIを活用し、時代のニーズや業界の変化に迅速に対応することが求められます。ここでは、そもそもなぜAIが必要とされているのか、その代表的な理由を3つ紹介します。
中小企業でAIが必要になっている理由
- 営業・マーケティングで「自動化」が求められている
- 顧客ニーズの多様化に対応する必要がある
- DXの遅れが経営のリスクとなっている
令和のビジネス環境を理解するうえでも役立つ内容ですので、AIの導入に関心のある経営者の方はぜひ参考にしてください。
営業・マーケティングで「自動化」が求められている
AIを活用すれば、顧客対応やデータ分析をもとにした提案業務を効率化でき、少人数でも成果を出せる体制を構築可能です。そのため、企業の人手不足と競争の激化が進んでいることもあり、中小企業では営業・マーケティング業務の自動化ニーズが高まっています。
顧客対応や問い合わせ対応を自動化できる「チャットボット」を導入すれば、24時間体制での対応が可能となり、問い合わせ対応や日程調整など営業プロセスの一部を人的介入なしで進行できます。
顧客ニーズの多様化に対応する必要がある
顧客ニーズが多様化・高度化する中、中小企業には柔軟かつ迅速な対応が求められています。
AIは顧客データを分析し、一人ひとりに最適な提案やサービスを自動で提供できるため、中小企業のように限られた人員でも質の高い顧客対応を実現できます。高品質な顧客対応は、顧客満足度の向上やリピート率の改善につながるため、事業の成長において必要不可欠です。
DXの遅れが経営のリスクとなっている
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を活用して、より効率的な業務体制を実現する取り組みです。DXが進んでいないと、業務の属人化や情報の分断が起きやすく、変化の激しい市場への対応が難しくなるリスクがあります。
とくにAIの登場によって業務の標準化やデータの可視化が進み、変化の多い市場でも迅速かつ的確な経営判断が可能になってきました。そのため、DXの遅れは今や経営課題そのものであり、AI導入はその解決に直結する手段といえます。
中小企業でAIを活用するメリットとは
AIによる文章作成・レポート生成、在庫や発注の最適化など、AIを活用できる業務領域は今や多岐にわたります。そのため、AI導入によって得られるメリットも幅広く、業務プロセスが劇的に改善されるケースも珍しくありません。
ここでは、中小企業の経営者が知っておきたい、AI活用の主なメリットを3つ解説します。
中小企業でAIを活用するメリット
- 少ない人手でも業務を回せるようになる
- ミスやトラブルを減らせる
- 競合他社との差別化につながる
以下のメリットを踏まえて、AI導入を検討する際の参考にしてください。
少ない人手でも業務を回せるようになる
中小企業は慢性的な人手不足に直面しており、限られた人材で多様な業務に対応しなければなりません。
AIを活用すると、データ入力・顧客対応・在庫管理といった定型業務を自動化でき、作業負担を大幅に軽減できます。少人数でも業務を効率的に回しやすくなるため、社員をより付加価値の高いコア業務へ集中させることが可能になります。
ミスやトラブルを減らせる
AIを活用することで、手作業による入力ミスや確認漏れといったヒューマンエラーを大幅に削減できます。
たとえば、データ処理や在庫管理をAIが自動化すると、事務処理の正確性が向上し、トラブルを未然に防止することが可能です。さらに、異常検知や予測分析機能を活用すれば、問題が発生する前に対策を講じやすくなり、業務の安定性と信頼性が向上します。
競合他社との差別化につながる
AIの重要性を軽視し、導入しない中小企業も少なくありません。そのため、AIを導入することで、効率的な業務体制の構築や、過去データを活用したサービス提供を実現し、競合他社との差別化を図ることが可能です。
AIによる業務効率化や対応スピードの向上は顧客満足度にも直結するため、ユーザーから選ばれる企業としての立場を確立しやすくなるメリットも、見逃せないポイントだといえるでしょう。
【業務効率化のヒントになる】中小企業のAI(生成AI)導入事例5選
なかなか自社にAIを導入するイメージが湧かない場合は、同じ中小企業の導入例を参考にするのがおすすめです。ここでは、業務効率化のヒントになる中小企業のAI(生成AI)導入事例を5つ紹介します。
中小企業のAI(生成AI)導入事例
- 株式会社ヨシズミプレス
- 株式会社山本金属製作所
- 株式会社ピーチ・ジョン
- 株式会社やさしい手
- 株式会社ネイティブキャンプ
さまざまな業界の事例をピックアップしているので、自社の領域に近い業界のケースをチェックしてみてはいかがでしょうか。
株式会社ヨシズミプレスの事例
電池部品や金属文具などを製造している「株式会社ヨシズミプレス」では、月産50万個以上の微細な金属部品検査にAI画像認識を導入しています。AI画像認識を導入したことで、6名で10日かけていた目視検査を大幅に効率化し、検査時間を月40%削減しました。不良品のみを人手で再確認する体制に移行したことで、業務負担とコストを削減し、利益率の向上にもつながっています。
経済産業省の支援を活用しつつ、AIを導入したこともあり、社内での工夫と試行錯誤で導入を成功させた好事例だといえるでしょう。
株式会社山本金属製作所の事例
精密加工や加工計測評価の事業を展開している「株式会社山本金属製作所」は、金属加工現場の「見える化」を目的に、自社開発のセンサーやAIを活用したモニタリング技術を導入しています。加工時の負荷をリアルタイムで分析し、最適条件をAIが提案する仕組みによって、生産効率と品質を大幅に向上させました。
さらに、夜間無人稼働も可能となり、省人化とコスト削減の両立にも成功しています。
株式会社ピーチ・ジョンの事例
下着販売をメインに展開している「株式会社ピーチ・ジョン」では、ECサイトでの偶発的な商品との出会いを再現するため、台湾発スタートアップ企業が提供するAIマーケティングツール「awoo AI」を導入しています。
ユーザーが商品ページを閲覧する際には、awoo AIが関連性の高いキーワードを提示し、自然に他の商品へ遷移できる導線を生み出すことで、サイト内の回遊性が向上しました。これにより、リアル店舗ならではの“商品との出会い”をオンライン上でも演出でき、購買機会の最大化にもつながっています。
株式会社やさしい手の事例
地域密着型の介護サービスを提供する「株式会社やさしい手」は、業務効率化を目的にAWSの生成AIサービス「Amazon Bedrock」を導入しています。介護記録の要約や報告書の自動作成をAIで行うことで、月6〜9万字に及ぶ記録作業を大幅に省力化しました。
さらに、ケアプランの自動生成やLINEでの自動応答機能の導入も検討しており、介護現場の業務負担軽減とサービス品質の向上を目指しています。
株式会社ネイティブキャンプの事例
オンライン英会話サービスを提供する「株式会社ネイティブキャンプ」は、AWSの生成AIサービス「Amazon Bedrock」を導入しています。生徒の属性に基づき講師へトークテーマを提案する「AIトピックサジェスト」機能や、レッスン内容を要約する「AIレッスンサマリー」機能の開発を進めており、講師・生徒双方の負担軽減や学習効率・満足度の向上に寄与することが期待されています。
今後は、コンテンツ開発や講師教育の自動化など、さらなる領域でも生成AIの活用を予定しています。
中小企業がAI導入を成功させるための5ステップ
AIを効果的に活用するためには、導入プロセスを明確にすることが重要です。ここでは、AIを業務フローに取り入れるための手順を5つのステップに分けて解説します。
AI導入ステップ
- AI導入の目的と課題を明確にする
- 自社業務を整理しAI化できる業務を明確にする
- AIツールを選定する
- 最小の範囲で試験導入する
- 効果を確認したのちに本格的に導入をスタートする
AIツールの選び方も紹介しているので、はじめてAIを導入する中小企業の方もぜひ参考にしてみてください。
ステップ1:AI導入の目的と課題を明確にする
自社の現状を正確に把握し、「何のためにAIを導入するのか」という目的を明確にすることが重要です。業務上の課題を洗い出し、優先順位をつけることで、AI導入の方向性が定まります。
また、AI導入の責任者選定やチーム体制の構築、数値目標の設定など、運用に必要な要素もあわせて決めておくことをおすすめします。
ステップ2:自社業務を整理しAI化できる業務を明確にする
目的と課題が明確になったら、社内業務を整理し、AIで自動化・効率化できる業務を具体的に洗い出します。数値計算や定型文書作成などの単純作業はAIと相性が良いため、候補に加えると良いでしょう。
AI化できる業務のイメージがつかみにくい場合は、同業他社のAI導入事例を確認し、どのように活用されているか把握することも有効です。
ステップ3:AIツールを選定する
自動化・効率化の対象業務が明確になったら、目的や課題に合ったAIツールを選定します。多くのAIツールには無料版があるため、まずは使用感を確かめたうえで有料版の導入を検討すると良いでしょう。
また、単にツールを導入するだけでなく、必要に応じて業務プロセスの再設計も行い、全体効率が最大化される仕組みを整えることが重要です。
ステップ4:最小の範囲で試験導入する
ツールを選定したら、まずは限定的な部門や業務で試験導入しましょう。この段階で操作研修や設定調整をし、従業員が実際に使える状態に整えることが大切です。
研修内容は役職やスキルに応じてカスタマイズし、社内全体のAIリテラシー向上を図りましょう。
ステップ5:効果を確認したのちに本格的に導入をスタートする
試験導入で得られた結果をもとに効果を検証し、改善点を整理したうえで本格導入へ進みます。運用後も継続的に改善サイクルを回し、新しいAIツールや使い方を柔軟に取り入れることが成功のカギです。
AIを導入して終わりではなく、従業員の声を聞きながら業務フローを調整し、より快適に活用できる環境づくりを進めることが重要です。
中小企業が押さえておくべきAI活用のポイント
AIをうまく活用するには、導入手順を事前に明確にしておくだけでなく、いくつか押さえておきたいポイントがあります。ここでは、中小企業がAI導入時に実践しておくべき活用ポイントを4つ紹介します。
AI活用のポイント
- 明確な数値目標を決めてから導入する
- 社員にAIに関する教育を実施する
- AIによる効果を定期的に確認する
- 外部の専門家や外部ベンダーを適切に活用する
AIは導入するだけでは十分な効果を発揮できません。以下のポイントを確認し、自社の業務形態に合った形で運用を進めるようにしましょう。
明確な数値目標を決めてから導入する
AI導入を成功させるには、目的を曖昧にせず、「何を、どの程度改善したいのか」という数値目標を事前に設定することが重要です。たとえば「業務時間を30%削減」「問い合わせ対応のミス率を半減」など、具体的な数値を定めることで、導入効果の検証やツール選定の判断基準となります。
また、明確な目標があることで社内の意識統一が図れ、AI運用を進めるための推進力も高まりやすくなります。
社員にAIに関する教育を実施する
導入後に現場で活用が進まない主な要因の一つが、教育不足によって社員のスキルとツールの使用難易度にギャップが生じることです。そのため、AI導入を成功させるには、社員一人ひとりがAIの仕組みや活用方法を理解し、実務で活用できる状態を整えることが重要です。
研修やワークショップ、OJTなどを通じて継続的な教育体制を整備し、社員の不安や抵抗感を解消することで、AIツールの活用が定着しやすくなります。
AIによる効果を定期的に確認する
AI導入後は、運用効果を定期的に数値で検証することが重要です。導入自体が目的化してしまうと、現場で活用されず形骸化するリスクがあります。
KPI(重要業績評価指標)を設定し、業務効率の改善度やコスト削減率などを可視化することで、課題の早期発見と改善が可能になります。PDCAサイクルを回しながら継続的に検証・調整し、AIの効果を最大限に発揮できるよう運用を最適化しましょう。
外部の専門家や外部ベンダーを適切に活用する
中小企業がAIを導入・活用する際、社内に専門的な知識や技術が不足しているケースは少なくありません。知見が不十分なままでは効果的な運用が難しくなるため、外部の専門家やAIベンダーのサポートを活用することが成功のカギとなります。
導入から運用・改善までを伴走型で支援してもらうことで、自社の課題に合った最適な設計や運用が実現可能です。また、第三者の視点を取り入れることで、社内だけでは気づきにくい改善点にも対応しやすくなります。
まとめ
AIは、中小企業が抱える人手不足や業務の属人化といった課題を解消し、競争力を高める強力な手段です。販売・マーケティングからバックオフィスまで幅広く活用でき、低コストで導入できるツールも増えているため、導入のハードルは年々下がっています。
しかし、AIは導入するだけでは十分な効果を発揮しません。企業側でもAIが力を発揮しやすい業務フローを構築し、積極的に運用する姿勢が求められます。もし「AIを導入したいが、専門知識や経験がなく、何から手をつければよいか分からない」と悩んでいる場合は、外部の専門家やAIベンダーに相談してみることをおすすめします。


