企業がスムーズにAIを導入するには?AIの選び方とともに徹底解説

多くの企業が業務効率化や競争力強化を目指し、AI(人工知能)の活用に注目しています。とくに近年はChatGPTに代表される生成AIの登場もあり、「自社でもAIを導入してメリットを得たい」と考える企業が増えました。

いっぽうで、何から始めればよいのかや導入失敗のリスクに不安を感じ、一歩踏み出せないケースも少なくありません

この記事では、AI導入がもたらす価値や現状、成功するための7つの手順、最適なAIツール選定のポイントなど、企業がAIをスムーズに導入するために知っておくべきポイントを解説します。

AI導入が企業にもたらす価値とは

AI導入が企業にもたらす価値は、業務効率化・コスト削減・意思決定の高度化にあります。定型業務をAIが自動化することで、人は付加価値の高い業務に集中でき、生産性向上につながります

また、データ分析や予測精度が高まることで、経験や勘に頼らない迅速な意思決定が可能です。人手不足の解消や競争力強化の観点からも、AIは企業成長を支える重要な基盤として機能するといえるでしょう。

AI導入失敗のリスクとは

もちろん、AI導入が必ず成功する保証はありません。むしろ準備不足や計画不備で導入が失敗すると、企業には以下のようなリスクや損失が発生します。

  • コスト・時間の損失:計画倒れで導入が頓挫すれば、投じた費用や関わった担当者の時間がすべて無駄になってしまいます
  • システム改修の手戻り:AIを組み込むために既存の業務システムやフローを変更・連携した場合、導入失敗時には元の状態に戻す必要が出てきます

AI導入プロジェクトの失敗は、社内外へのネガティブな影響も及ぼします。プロジェクトチームの士気低下や、経営層が「AIは役に立たない」と早合点してしまうと、将来的に有望なAI活用機会まで失ってしまいかねません。

企業のAI導入率とは

日経クロステックの調査によると、日本企業の生成AI導入率は64.4%で、多くが「Microsoft 365 Copilot」や「ChatGPT」を利用していることが判明しています。一方、AIエージェントの導入率は29.7%と低めで、PoCや検討段階にとどまる企業も多い傾向があります。

自社開発型の生成AI導入はさらに限定的であり、技術的・組織的な課題が導入に大きな影響を及ぼしているといえるでしょう。

参考記事:日本企業における生成AIツールの導入率は64.4%、AIエージェントは29.7% | 日経クロステック(xTECH)

企業におけるAI・生成AI導入手順を7ステップで紹介

ここでは、企業がAI(生成AIを含む)を業務に取り入れるまでの流れを、7つのステップに沿って紹介します。

企業におけるAI・生成AI導入手順

  1. 導入目的・課題を明確にする
  2. AI導入に適した業務を選定する
  3. 必要なデータを整理・整備する
  4. 小規模にPoC(実証実験)を行う
  5. AIツール・ベンダーを選定する
  6. 業務フローに組み込む
  7. 社内定着・人材育成を進める

事前に導入の流れを明確にし、AIの導入をスムーズに進めてみてはいかがでしょうか。

ステップ① 導入目的・課題を明確にする

AIありきで闇雲に飛びつくのではなく、まず企業としての導入目的や解決したい経営課題を洗い出します。例えば「定型業務の自動化による生産性向上」なのか、「データ分析による意思決定の高度化」なのか、あるいは「新サービス創出」なのか、目指すゴールを具体的に設定しましょう。

導入目的が明確になれば、自社に本当に必要なAIソリューションの種類や、優先的に着手すべき業務領域が見えてきます。また目的に紐づくKPI(重要業績指標)も設定しておくと、後々AI導入の効果検証がしやすくなります。

目的と課題をはっきりさせることが、成功への出発点です。

ステップ② AI導入に適した業務を選定する

導入の狙いが定まったら、AIを適用すべき業務プロセスを選び出します。自社の現状業務を棚卸しして可視化し、どの業務ならAIで効率化・自動化できそうか、どこにボトルネックがあるかを分析しましょう。

ポイントは、「繰り返しが多くルール化しやすい業務」「処理データ量が多く人間では分析しきれない業務」などを優先してピックアップすることです。ピックアップする際には、現状業務と課題、その解決に役立つAI活用例を対応づけてみると、導入対象が見えてきます。

AI導入はあれもこれもと一度に広げすぎず、まずは優先度が高く効果が出やすい業務から着手するのが成功のコツです。

ステップ③ 必要なデータを整理・整備する

AIを賢く働かせるには、良質なデータの準備が欠かせません。選定した業務領域について、AIが学習・分析するために必要なデータを集めましょう。

また、自社データだけでは不十分な場合は、外部の公開データセットやクラウドサービスが提供する学習済みモデルを活用する方法もあります。いずれにせよ、データはAIの燃料です。導入前にしっかり整理・整備し、AIが最大のパフォーマンスを発揮できる土台を作ります

ステップ④ 小規模にPoC(実証実験)を行う

AI導入の本番展開に移る前に、PoCを試してみることを強くおすすめします。PoCとは、まず限定的な範囲でAIを試験導入し、実際に使えるかどうか効果を検証するプロセスです。

例えば選定した一つの業務について、少人数のチームや一部部署内でAIツールを導入してみます。一定期間運用し、AIが期待通りの精度・成果を出すかを確認しましょう。

PoCによって、「ツールの性能が十分か」「自社業務にフィットするか」「課題だった点は解消されたか」を見極め、必要に応じてAIモデルの調整や別ツールへの切り替え検討も行います。PoCで得られた知見は、本格導入の成否を左右する貴重な財産です。いきなり全面導入せず、まずは小さく試すことでリスクを抑えつつ成功率を高めましょう。

ステップ⑤ AIツール・ベンダーを選定する

PoCの結果も踏まえつつ、本格導入するAIツールや協力ベンダーを選定します。市場には実に多種多様なAIツールが存在するため、自社の目的に合った最適なものを見極めることが重要です。

場合によっては複数ベンダーの提案を比較検討したり、追加のデモを依頼して使い勝手を試すことも有効です。焦らず慎重に選び抜きましょう。

ステップ⑥ 業務フローに組み込む

採用するAIツールが決まったら、実際に既存の業務プロセスへ組み込む段階に移ります。本格導入では、PoCとは異なり全社規模または対象部門全体への展開となるため、綿密な計画と社内調整が求められます。

誰がいつAIを使い、入力・出力はどのシステムに連携し、エラー発生時はどうリカバリーするかといった具体的な運用ルールを決めておきましょう

また、AI導入後の社内役割分担も見直すことも重要です。AIが自動化する部分と、人間が引き続き判断する部分の切り分けを明確にし、現場担当者やIT部門のサポート担当など関係者の責務をはっきりさせておきましょう。

ステップ⑦ 社内定着・人材育成を進める

AIツールを導入して終わりではなく、社内に根付かせ定着させることが肝心です。

まず、従業員が新しいAIツールを正しく活用できるよう、教育・研修の機会を設けましょう。操作方法のトレーニングだけでなく、情報漏えいや著作権といったAI利用上の注意点についてもしっかり周知する必要があります。

また、AI活用に不慣れな従業員には現場でフォローアップする体制も用意することも大切です。質問に答える社内ヘルプデスクを設置したり、AI利活用に詳しい社員を各部署のサポーターとして配置するなど、困ったときに支援を受けられる環境を整備しましょう。

企業に最適なAIツールを選ぶ5つのポイント

市場には多数のAIツールがありますが、闇雲に選ぶと思わぬミスマッチに陥ることもあります。ここでは、企業が自社に最適なAIツールを選定する際のチェックポイントを5つ紹介します。

企業に最適なAIツールを選ぶポイント

  • 解決したい業務課題と合っているか
  • 現場担当者が使いこなせる操作性か
  • 既存システム・業務フローと連携できるか
  • セキュリティ・情報管理は十分か
  • 費用対効果・サポート体制は妥当か

以下の観点を押さえておけば、導入後に「こんなはずでは…」と後悔するリスクを減らせるでしょう。

解決したい業務課題と合っているか

いくら高機能なAIでも、自社の目的にフィットしなければ宝の持ち腐れです。例えば文章生成AIは問い合わせ対応文の自動作成には役立ちますが、画像からの異常検知には使えません。

まず「自社が解決したい業務課題」をはっきりさせ、その課題に対応できるAI技術・機能を持ったツールかどうかを確認しましょう

現場担当者が使いこなせる操作性か

どんなに優秀なAIでも、現場で使われなければ意味がありません。ツールの操作性やUIが現場担当者にとって分かりやすく、日常業務の中で無理なく使いこなせるかを評価しましょう。

特別なプログラミング知識が不要で直感的に操作できるか、日本語対応は十分か、といった点も重要です。導入初期には担当者向けのトレーニング機会を提供してくれるベンダーだと安心です。

既存システム・業務フローと連携できるか

企業でAIツールを導入する際には、既存のITシステムや業務フローとの相性もチェックしましょう。多くの場合は既存データベースとのデータ連携や、ワークフローシステムとの統合が必要になります。

ツールによってはAPIを提供しておりシステム連携が可能なもの、逆にカスタマイズが難しく独立した操作が必要なものもあります。クラウド型かオンプレミス型かという違いも、社内インフラとの整合性に影響します。

導入後に「自社システムと繋がらなかった」ということがないよう、事前にIT担当部署とも相談しつつ連携性を確認しておきましょう

セキュリティ・情報管理は十分か

AI導入において見落とせないのがセキュリティとデータ管理の観点です。とくに外部クラウドサービスとして提供されるAIツールでは、自社の機密データをクラウド上に預けることになります。そこで、ベンダーのセキュリティ対策(データ暗号化やアクセス制限、認証管理など)が信頼できるかをチェックしましょう

また、生成AIツールの場合は社内情報の外部提供リスクや、AIが誤った情報を生成するリスクも考慮が必要です。こうしたリスクに対し、社内で利用ルールやチェック体制を整備するとともに、ツール側で誤りの検知フィルターや利用ログ管理機能があるかなどもポイントになります。

情報セキュリティポリシーに適合したAIツールを選ぶことが、安心・安全な導入の前提条件です。

費用対効果・サポート体制は妥当か

AIツールの価格体系は様々で、初期導入費○百万円+月額利用料○万円というものから、完全サブスクリプション型、成果連動型料金のものまであります。自社の予算内に収まるかはもちろん、その費用に見合う効果が見込めるかを、事前にシミュレーションすることが大切です。

また、ベンダーのサポート体制も重要な評価項目です。導入時のオンボーディング支援や、運用中の問い合わせ対応、定期的なバージョンアップ情報の提供など、ベンダーが伴走してくれるかを確認しましょう。AIの専門知識が社内に乏しい場合、導入後のコンサルティングやチューニング支援を行ってくれるベンダーだと非常に心強いはずです。

企業のAI導入に関するよくある質問

ここでは、企業がAI導入を検討する際によく疑問に思うポイントについてQ&A形式で解説します。

企業のAI導入にかかる費用はいくら?

「AI導入費用は〇〇円」と一概には言えませんが、小規模な試験導入なら数十万円規模から、大掛かりな全社導入なら数千万円規模まで幅広いです。自社の目的と予算に応じて、まずは無理のない範囲でスモールスタートし、効果が見込めれば徐々に投資を拡大するアプローチが現実的です。

AI導入のリスクを下げるコツとは?

AI導入の成功率を高め、失敗リスクを抑えるためには、以下のようなポイントに留意すると良いでしょう。

  • 小さく始めて段階的に拡大する
  • 目的と現場ニーズのブレをなくす
  • 信頼できるパートナーの活用
  • データやセキュリティへの配慮
  • 社内教育と意識改革

以上のようなコツを押さえ、慎重かつ着実にプロジェクトを進めれば、AI導入のリスクを大きく下げ、成功率を高められます。

まとめ

AIは企業にもたらす効果が大きく、正しく導入できれば劇的な業務効率化やコスト削減、さらには新たな価値創造まで実現できる可能性があります。一方で、目的を見失った導入や準備不足のままの導入は失敗リスクも伴うため、この記事で紹介したように入念な計画と段階的なアプローチが重要です。

AIを適切に使えば企業の競争力を高める強力な土台となり得ます。今回の解説を参考に、ぜひ自社でのAI活用に向けた一歩を踏み出してみてください