AIを使った業務改善をするには?事例や中小企業向けのポイントを解説

AI(人工知能)は近年、業務効率化やビジネス改善の切り札として注目を集めています。とくに人手不足や競争激化に直面しがちな中小企業にとって、AIを活用した業務改善は生産性向上の大きな助けとなり得ます。

この記事では、なぜ業務改善にAIを活用すべきなのか、その理由や効果を解説し、中小企業でも取り組みやすい具体的なAI活用アイデアや実際の導入事例を紹介します。AIを使った業務改善に興味はあるものの具体的なイメージがつかめないという方は、ぜひ参考にしてください。

なぜ業務改善にAIを活用するのか?

多くの企業が課題として抱えている業務改善ですが、AI技術が発達したことにより、業務改善にAIを活用する企業が増加しています。

ここでは、なぜ業務改善にAIを活用するのかを、中小企業のAI導入率とともに解説します。

AI導入で改善できる業務の範囲

AIは単純作業の自動化から高度なデータ分析まで対応できるため、さまざまな場面で「人の負担軽減」や「生産性向上」に貢献しています。AI導入で改善できる代表的な業務例は以下のとおりです。

業務分野AI活用例効果
顧客対応AIチャットボットによる問い合わせ対応の自動化対応人件費の削減
データ分析AI分析ツールで売上データの傾向予測売上機会の損失防止
製造・品質管理画像認識AIによる製品の外観検査自動化不良品削減と検査工数の大幅削減

AIは社内の様々な部署・業務で活用可能です。単純作業の省力化だけでなく、人間では難しいパターン発見や予測も得意とするため、うまく導入すれば時間短縮と品質向上の両面で効果が期待できます

AIを導入している中小企業の割合

総務省の調査では、中小企業のAI導入率は5%程度にとどまっており、大企業では導入率が30%を超えていることを考えると、依然として中小企業はAI活用で遅れを取っている状況です。

しかし、裏を返せば多くの中小企業にとってAI活用はまだ伸びしろが大きい分野とも言えます。早めに着手してノウハウを蓄積すれば、競合との差別化や生産性向上につながる可能性は十分にあります。

参考記事:総務省|令和元年版 情報通信白書|IoT・AIの導入状況と今後の意向

中小企業が取り組みやすいAI改善のアイデア4選

ここからは、中小企業でも比較的導入しやすいAI活用のアイデアを4つ紹介します。

中小企業が取り組みやすいAI改善のアイデア4選

  • 顧客対応の自動化
  • 文書・資料作成の自動化と効率化
  • AIを活用したデータ分析
  • 在庫管理・需要予測へのAI適用

自社の課題に合いそうなものから、ぜひ検討してみてください。

顧客対応の自動化

顧客からの問い合わせ対応は、多くの企業で時間と人的リソースを消費する業務です。AIチャットボットを導入すれば、よくある質問への回答を自動化し、24時間体制で顧客対応が可能になります。

実際のオペレーター対応が必要な複雑な相談だけ人間に引き継ぐ仕組みにすれば、社員の負担軽減と対応品質の均一化が図れます。最近は専門知識がなくても使えるチャットボット構築サービスが多数あり、シナリオに沿ったQ&Aを用意するだけで導入できるため、中小企業にとっても取り組みやすい分野といえるでしょう。

文書・資料作成の自動化と効率化

提案書、報告書、議事録、メール文面など、日常的に発生する文章作成業務にAIを活用すれば大幅な効率化が可能です。

例えば、生成AI(文章生成AI)に箇条書きの要点を入力すれば、それをもとに下書き文章を作成してくれます。社員はその下書きをベースに手直しするだけで済むため、ゼロから文章を書き起こす手間が省けます。

また、文章の校正や要約を行うAIツールを使えば、誤字脱字のチェックや長文の要点整理も自動化可能です。

AIを活用したデータ分析

中小企業でも、売上データや顧客情報、生産実績など、何らかのデータは日々発生しています。こうしたビジネスデータをAIで分析することで、これまで見えなかった傾向やパターンを把握し、意思決定に役立てることが可能です。

最近では専門的な分析スキルがなくても使えるBIツールやAutoML(自動機械学習)サービスも登場しており、データをアップロードするだけでAIが自動分析してくれるものもあります。データに基づいた経営判断を行うためにも、まずは手持ちのデータからAI分析を試してみる価値は大きいです。

在庫管理・需要予測へのAI適用

製造業や小売業など在庫を扱う企業にとって、需要予測と在庫管理は利益を左右する重要な業務です。AIを活用すれば、過去の販売実績や季節要因、取引先からの発注予告情報などを考慮に入れて、今後の需要を高精度に予測することが可能です。

需要予測AIを導入すると、適正在庫を保ちやすくなり、欠品による機会損失や在庫過多による無駄なコストを大幅に削減できます。在庫変動が大きい企業ほど効果が実感しやすい領域ですので、データが蓄積されている場合はぜひ検討したい活用例です。

中小企業によるAIの業務改善事例3選

ここでは、実際にAIを導入して業務改善を成し遂げた中小企業の事例を3つ紹介します。

中小企業によるAIの業務改善事例

  • 株式会社イントロダクション
  • 株式会社丸秀
  • 城南電機工業

以下の事例を参考に、自社の課題に合った業務改善方法を探してみてはいかがでしょうか。

株式会社イントロダクション

システム開発を手掛ける小規模企業「株式会社イントロダクション」では、社員向け福利厚生制度の運用効率化を目的に独自のWebアプリを開発しました。

開発した社内アプリにはAI技術が組み込まれており、レシート写真をAI-OCR(文字認識AI)で読み取って経費申請できる仕組みを導入しています。その結果、経理部門での精算作業は従来の1時間から5分程度に短縮され、大幅な効率化を実現しています

また、このアプリの開発プロセス自体にも生成AIを活用しました。コードの一部を生成AIに作成させることで、経験の浅いエンジニアでもスムーズに開発を進められています。

株式会社丸秀

老舗の金属部品メーカーである「株式会社丸秀」は、自動車業界のEVシフトによる需要減少の懸念を背景に、2018年からDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組みました。中でもDXの目玉となったのが、製品の外観検査工程への画像認識AI導入です。

従来は人手(2名)で行っていた目視検査に市販のAIカメラ検査システムを試験導入したところ、設定の柔軟さや精度の点で有効に機能したため本格導入を決定し、検査工程は2名体制から1名体制へと省力化され、検査業務の効率が向上しました

これらのDX施策の結果、製造現場では不良率が計画開始前より60%削減されるなど品質面で大きな成果を上げただけでなく、紙の廃止による工数削減や自動化による省人化でコスト面でも改善が見られました。

城南電機工業

城南電機工業株式会社」は、自動車用照明機器類や樹脂成形品の製造を行う中小企業です。同社では、受注数量の予測業務にAIを導入し在庫管理の精度向上を図りました。

過去の製品ごとの受注実績データと取引先からの内示情報をAIに学習させ、将来の受注数量を予測するモデルを構築し、導入後は、製品によって予測誤差率が従来の52%から24%にまで改善に成功しています。

城南電機工業の事例は、専門のデータサイエンティストがいなくても社内に蓄積されたデータを活かしてAIで業務改善ができる好例といえるでしょう。

AIによる業務効率化で注意すべきポイント

ここでは、AIによる業務効率化で注意すべきポイントを3つ紹介します。

AIによる業務効率化で注意すべきポイント

  • 「AIありき」で導入しない
  • セキュリティ・情報漏洩リスクを考慮する
  • 効果測定(KPI)を設定する

注意すべきポイントを事前に把握して、費用対効果の高いAI導入を実現してみてはいかがでしょうか。

「AIありき」で導入しない

「とにかくAIを導入すればすべて解決するだろう」という姿勢で臨むのは禁物です。AI導入自体が目的化してしまうと、本来改善すべき業務プロセスの見直しがおろそかになり、結果として現場に定着しないケースも少なくありません

例えば、「人手が足りない」という課題に対しても、その原因が業務フローの非効率にあるのか、人材育成にあるのかで解決策は異なります。安易にツールありきで飛びつかず、まずは解決したい業務上の課題を起点に考えることが、AI導入成功への近道です。

セキュリティ・情報漏洩リスクを考慮する

AIツールを利用する際には、取り扱うデータの機密性や安全性にも注意が必要です。とくにクラウド上の生成AIサービスなどを使う場合、社外に機密情報を入力するリスクが伴います。

また、AIが誤って不適切な情報を生成し、それが対外的に発信されるとトラブルにつながる恐れもあります。せっかく業務効率化が実現しても情報漏洩事故が起これば本末転倒ですので、セキュリティ面の検討は怠らないようにしましょう

効果測定(KPI)を設定する

AI導入の成果を確実に得るためには、導入前後で効果を測定する仕組みを作っておくことが大切です。例えば、チャットボット導入であれば「一次対応で解決した問い合わせの割合」や「オペレーター対応までの平均時間」、文書作成支援ツールであれば「資料作成に要した時間の短縮率」や「校正にかかる修正指摘件数」などが考えられます。

また、効果測定の過程で課題が見つかれば、設定したKPIをもとにPDCAサイクルを回して改善策を講じることも可能です。「導入して終わり」ではなく、導入後もしっかり効果を測り、軌道修正しながら活用を深めていくことが重要といえるでしょう。

AIを使った業務改善に関するよくある質問

ここでは、AIを使った業務改善に関するよくある質問をQ&A方式で解説します。

AIを導入すれば、すぐに業務効率は上がりますか?

効果が現れるまでの期間は導入するAIの種類や業務内容によります。シンプルなクラウドAIサービスを使った場合などは比較的早く効率化を実感できるケースもありますが、多くの場合、本格的な効果が出るまでに一定の慣らし期間が必要です。

専門知識やエンジニアがいない会社でも導入できますか?

専門のAIエンジニアが社内にいなくても導入可能なケースは多いです。近年はノーコード・ローコードで利用できるAIツールが数多く登場しており、ITの専門知識がない社員でも直感的な操作で使えるよう工夫されています。

また、外部のITベンダーやコンサルタントに依頼して、自社の課題に合ったAIソリューションを導入する方法も一般的です。自社内に専門知識がなくても、小さな範囲から外部の力も借りつつ導入を進めれば、十分にAI活用は実現可能です。

どの業務からAI化するのが効果的ですか?

人手や時間がかかっている定型業務から着手すると効果が見えやすいです。例えば、問い合わせ対応に追われているならチャットボット、資料作成に工数がかかっているなら文章自動生成ツール、といった具合に、負担の大きい業務を優先してAIで効率化するのが良いでしょう。

まとめ

AIを使った業務改善は、中小企業にとって決してハードルの高い特別な取り組みではありません。チャットボットによる顧客対応の自動化や文章作成支援ツールの活用、需要予測AIの導入など、身近な業務から一歩ずつ始めることで、少人数の企業でも大きな効率化効果を得られる可能性があります。

重要なのは、自社のニーズに合った形で段階的にAIを導入し、その効果を測定・検証しながら継続的に改善していくことです。AIはあくまで道具ですので、「人間の知見や経験」と組み合わせて上手に活用し、これからの業務改善に役立てていきましょう。